いきなりですが総務部・人事部ができることなら関わりたくない、腫れ物に触るような案件があることをご存知ですか?
それは特別な案件ではなく、社内で日常茶飯事的に起こっている案件だったりします。
そもそもその前に総務部の仕事ってどんな感じなのかご存知ですか?
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この記事である程度イメージしていただいたと思いますが、そんな総務部・人事部には様々な労務トラブルが日々集まってきます。簡単に解決するものもあればこじれて長引くものもあります。
きょうはそんな労務トラブルの中で実際に起こったものを5件ほどピックアップしてご紹介します。よくある案件ですが、どれもこれも必要以上に気を遣うものばかりです。あくまでも私の会社の案件ですので、すべての会社でこれと同じように対処して解決できるとは限りませんが、少しくらいは参考になるかと思っています。
会社を円滑に平和にフェアに運営していくためには、上司がときには最低限の法律知識と勇気を持って部下に相対さなければなりません。この記事がその一助になれたら幸甚です。
それではそろそろ始めます。
1.残業
【総務メモ】
Aさんは真面目すぎるくらい真面目でちょっと言葉を悪く言うと、融通が利かないというか要領が悪いタイプの社員です。慎重さ故の二重管理や二重チェックが多くそうなると当然仕事のスピードが遅くなります。また責任感が強すぎて人に仕事を振ることがまったくできず抱え込んでしまっているようです。定時は17時ですが、日々22時、23時までコンスタントに残業しています。
Aさんの同僚に少し様子を聞いてみたところ、「仕事が遅いのは間違いないけれど、残業代を稼ぐためにゆっくりと業務をやったり、必要のない資料を作っているような気がしないでもないですよ」という見方も出てきました。
【悩ましいこの案件のポイント】
・仕事の能率が悪く労働時間が後ろ倒しになる
・仕事をシェアすれば定時に終わる仕事も抱え込む
・17時までは手を抜き残業が発生し始めてから本腰を入れる
【望まれる解決法】
Aさんの直属の上司はAさんの業務の棚卸をすることが先決です。その上で本当に必要な業務と必要でない業務を把握する必要があります。部下の能力を知り、その能力を最大限に引き出し、最高の成果を出せるような環境を整えることが管理職の重要なミッションなのです。
管理職は部下を指導・育成することと並んで部下の労働時間を管理する責任もあります。間違っても頭ごなしに「残業が多すぎるじゃないか!どうなっているんだ?!」と叱りつけるのではなく、Aさんと向き合って問題となっていることをひとつひとつ抽出してください。
場合によってはプライベートな部分(金銭的な部分)に踏み込む必要も出てきます。また長時間労働はメンタル不調や過労死の原因ともなりますので迅速かつ丁寧な対応が望まれます。
【サラリーマン川柳(第一生命)】
残業も 君の場合は ロスタイム
2.副業
【総務メモ】
Bさんは最近あまり元気がなく、勤務中にあくびをしたりボーっとしていたりすることが目に付くようになりました。また会議中や研修中にたまに居眠りをしているようです。さらに今まででは考えられないようなケアレスミスをしてしまったり、イライラして同僚と口論になったいるところも目撃されています。
Bさんの同僚に少し様子を聞いてみたところ、「彼女もしかして夜のバイトやってるんじゃないですか?最近お化粧も派手だし、寝不足なのかイライラしてるし、会社もソッコーで帰っちゃうし、なんか変ですよ。うちの会社バイト禁止でしたよね?」という見方も出てきました。
【悩ましいこの案件のポイント】
・とても疲れている様子であくびや居眠りが目に付く
・寝不足でイライラしているのかしばしば同僚と衝突している
・外見も派手になり残業もせず定時になったらあっという間に会社から出ていく
【望まれる解決法】
Bさんが会社に内緒でアルバイトをしていたとしたら就業規則違反であることは明白です。ただ法律的に言えば会社は社員の副業やアルバイトを禁止することはできないのが実情です。憲法で「職業選択の自由」が厳粛に保障されているからです。イコールこのことだけでBさんを解雇等の厳重な処分にすることはできないのが一般的です。
反面社員は意欲を持って仕事をする義務があり、業務に支障をきたすようなことはあってはならないと考えられています。それを根拠にBさんの直属の上司は「ダメのものはダメ」と言わなければならないことは言わなければなりません。
Bさんと向き合い、いきなり「アルバイトなんか禁止だぞ!わかっているのか!」ではなく丁寧に事実確認を行い、もし副業をしていることが事実であればその背景から相談に乗り、適切な解決策を一緒に考え、導き出すフォローをしてやることが望まれます。
【サラリーマン川柳(第一生命)】
便利です マスクで隠れる 大あくび
3.有給休暇
【総務メモ】
Cさんは日頃から遅刻の常習犯で典型的に自己管理のできないタイプの社員です。会社が忙しいとか重要な会議があるとかまったく眼中に無く頻繁に当日の朝いきなり「具合が悪いので有給にしておいてください」などと電話をしてきて平気で休んでしまうようです。
Cさんの同僚に少し様子を聞いてみたところ、「彼はネットが大好きで毎晩遅くまで夢中でゲームなんかをパソコンにかじりついてやってるらしいですよ。本当に体調が悪くて休むのであれば仕方ないですけど、大部分が寝坊じゃないですか?」という見方も出てきました。
【悩ましいこの案件のポイント】
・繁忙期に平気で有給休暇を取る
・ズル休みするために当日になって有給休暇を請求してくる
・有給休暇の意味とルールを勘違いしている
【望まれる解決法】
確かにいま国は労働時間短縮のために有給休暇の取得を推奨しています。だからと言って有給休暇は労働者の権利だとばかりに会社が非常に忙しい時に急に休まれたのでは特に中小企業では仕事が正常に回らなくなってしまいます。
確かに有給休暇は労働基準法で認められた正真正銘の労働者の権利です。でもある一定のルールのもとで運用しないと会社の業務に支障をきたす恐れすら出てきます。
Cさんの直属の上司は就業規則の中に「有給休暇の申請は前日までに」とか「事後申請は会社の判断で」などのルールが明記されていることを確認しそれをCさんに認識させることが大切です。
そもそも論としては、意欲を持って仕事に取り組ませるために根本原因であるCさんの勤務態度・生活習慣を改善させるような指導をすることが望まれます。
【サラリーマン川柳(第一生命)】
休みます LINEの文字は 元気そう
4.うつ病(メンタル不調)
【総務メモ】
最近課長に昇進したばかりのDさんは以前のような活き活きとした笑顔もなく、顔色もひどく悪いようです。頼まれた仕事を忘れてしまったり、些細をミスも連発しているとのこと。ポジションがあがり急に環境が変わったことに加え、いろんな重圧がのしかかってきたことに押し潰されそうになっているのかもしれません。
Dさんを呼んで総務の立場で少し話を聞いてみたところ、最初は口が重かったのですが、「夜全然寝れないんです。疲れているというわけではないのですが、仕事のことをあれこれ考えると寝つけないんです。夜中に何度も目が覚めてしまう日もあります。そうなると当然昼間眠くて、だるくて仕方ないんです。まあいろいろと環境が変わったのでそれに徐々に慣れてくれば大丈夫だと思いますが...」とやっとのことで聞き出すことができました。
【悩ましいこの案件のポイント】
・管理職となったDさんが持ち前の明るさを失い顔色もとても悪い
・睡眠不足や体のだるさで業務が捗らないし仕事の質の低下も避けられない
・次の段階として会社を休むというパターンが考えられる
【望まれる解決法】
ここ数年職場におけるメンタルヘルス問題が注目を浴びています。うつ病で休職するなどはまだ軽いほうで、過労死や自殺などの痛ましいニュースがしばしば世間を賑わせています。
会社には安全配慮義務というものがあって、社員が健康的に気持ちよく安全に仕事ができる環境を整える義務があります。社員ひとりひとりを親身になって見ることで社員の危険な兆候というかサインを絶対に見逃してはならないのです。
Dさんの直属の上司は「朝なかなか起きられない」とか「寝付きが悪い」とか「夜中目が覚める」などの危険信号にいちはやく気づき、Dさんと面談するなどして少しでもプレッシャーを取り除いてやったり、抱えている悩みを解決してやったりすることが早急に求められます。
またできればこのようなフェーズに進んでしまう前に、精神的に追い詰められたり、過度の緊張感を持ったりすることで心のバランスを崩してしまわないようにしっかりとコミュニケーションを取るようにすることが望まれます。
【サラリーマン川柳(第一生命)】
胃が痛い。 されど休日 絶好調!
5.パワハラ
【総務メモ】
Eさんはとても部下の面倒見もよく仕事は抜群にできるのですが、一昔前のタイプのモーレツ社員(部長職)です。部下を愛するがあまり厳しすぎる指導をしたり、ストレート過ぎる発言で部下からは恐れられています。本人にしてみれば何の悪気もないのですが、「バカ野郎!」とか「ほんと仕事できないなお前!」などは序の口で「お前この仕事向いてないよ!」とか「そんなにやりたくないなら辞めちまえ!」などと完璧なパワハラ発言を繰り返しています。事実メンタル不調を発症させてしまった部下もいます。
Eさんの部下に少し様子を聞いてみたところ、「部長は確かに仕事は滅茶苦茶できると思います。それは認めますし尊敬もしてます。部長に仕事のイロハを教わりました。でも部長が怖いんです。人前でも平気で大声でダメ出しされるし、恥もかかせられるのでたまらないんです」という悲鳴も出てきました。
【悩ましいこの案件のポイント】
・仕事もできるし結果も出すが部下に対する指導がスパルタすぎる
・部下を人前で怒鳴りつけその内容も完全にハラスメントになっている
・人一倍プライドが高いのでこの人に指導できる人がほぼ皆無
【望まれる解決法】
ハラスメント、特に「パワハラ」という言葉は解り辛いものです。一般的に「パワハラとは同じ職場に働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職業内の優位性を背景に業務の適正な範囲を超えて精神的・肉体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう」と定義されています。
またパワハラは被害者だけでなく加害者の一生も大きく狂わせてしまい、そうなると企業にとっても人材の損失や生産性の低下は避けられず、場合によっては企業は法的な責任も追求されかねません。それほど深刻でデリケートな問題なのです。
Eさんの直属の上司(この場合役員か総務ということになりますが)はEさんの指導がEさん自身のストレスの発散やイライラした感情のはけ口になっていないかを見極めることです。特に必要ではない場面で怒鳴りつけたり、名誉を汚すような発言をすることはパワハラと言えますので、上記のような深刻な結末になりかねないことをEさんによく理解してもらって、Eさんのやり方を変えるよう指示するしかありません。
その際Eさんのこともリスペクトしつつ会社全体で部下の指導育成を考え、より良い職場環境と、上司と部下の良好な上下関係が築かれることが望まれます。
【サラリーマン川柳(第一生命)】
言ってみたい 部長に向かって 「いうよねぇ~」
★パワハラについてさらに詳しくはこちらの記事で
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以上、総務部・人事部がまるで腫れ物に触るように扱う実際にあった労務トラブル案件5件でした。
労務トラブルは一度起きてしまうと会社に金銭的な損害を与えたり、企業イメージを悪くしたりします。風評被害も恐ろしいものがあります。また社内の雰囲気が悪くなったり、経営陣や管理職は疲弊してしまいます。もちろん総務や人事も同様です。本当に百害あって一利なしなのです。でもこの労務トラブルが全くなくなることは、残念ながらほぼありえないことなのです。だからこそその対応を慎重に行わなければならないのです。
最後にこの記事を書いていて一番強く感じたことを紹介して締めさせていただきます。
労務トラブルを解決するキモは、
・法律は押さえなければならないがそれを振りかざさない
・コミュニケーションスキルは必要だがそれを過信しない
・起こらないことが最良だが「備えあれば憂いなし」「転ばぬ先の杖」の精神で準備を怠らない
に集約されるような気がしますがいかがでしょうか?
最後までお読みいただきましてありがとうございました。
おまけ
サラリーマン川柳を探していて思わず吹き出してしまったのが5つほどありましたので貼っておきます。そこそこ笑えますよwww
サラリーマン川柳(第一生命)
- Excelを エグザイルと 読む部長
- コンカツは ロースか?フィレ?かと 父は聞き
- 草食系 嫌いな食べ物 「ホウ・レン・ソウ」
- 居酒屋を パワースポットと 言う部長
- 部長より 遠くが埋まる 飲みの席